小田銀座商店街視察

 9月6日の商店街研究会(東京支部)の現地視察では,店舗数約90の小振りな商店街ながらも,大型の事業にも積極的に取り組む小田銀座商店街(川崎市川崎区)を訪れ,小林桂一理事長にお話を伺いました。
 
  当商店街は最寄品を中心とした典型的な近隣型の商店街です。実質的な最寄り駅であるJR川崎駅とは,バスと徒歩で約25分も離れ,有名な名所・旧跡もありません。しかも,商圏内要所に駐車場1000台クラスのSCをはじめ,GMSや大型SMが点在するなど,外部環境的には厳しい商店街です。

 しかし,当商店街は,立地や競争環境,デフレ不況に苦しみながらも,変化としっかりと向き合い,スピーディかつ積極的に事業展開を図っています。小林理事長から伺ったエピソードやノウハウを織り交ぜながら,当商店街の活動を紹介します。

1) 3大活性化事業

 戦後の産業道路沿いの整備に符合して発展した当時の活気を取り戻すべく,平成3年より,本格的に活性化三大事業を推進し,平成7年までにすべて完了しました。

@ ショッピングモール化事業(H6完成)
A ポイントカード事業(H6スタート)
B コミュニティセンター建設(H7完成)

 これらの総事業費約45,000万円は,主に助成金と高度化資金,組合員の積み立てにより賄われました。この点で特筆すべきことは,組合員全員の高いコンセンサスの下で実施されたという参加意識の高さです。
カード事業(MYCARD oda)は,都内の名だたる商店街でさえ導入初期段階の所も多い中,当商店街では既に10年目を向かえ,設備更新も視野に入れる第2ラウンドを迎えています。ポイントを活用したイベントや顧客情報の活用においても,ベテランの域に入っていることは特筆に値します。
コミュニティセンターは,次に説明するやさしい街づくり事業の活動拠点や休憩場所としても効果的に活用されています。

2)やさしい街づくり事業

 高齢者・障害者にやさしく,便利な街づくりを目指して,平成10年より,

@ 共同宅配事業(手ぶらでご帰宅!)
A 情報発信事業(情報パンフ発行など)
B 無料健康相談(月2回,無料)

などを実施しており,課題を抱えながらも一定の成果を上げています。これらの事業には,カードホルダーへのアンケートで得られた,高齢者来街者が50%を占めるなどの結果が反映されています。しかしながら,「高齢者=出歩かない」などの一律的な推測が見事に外れたことや,宅配事業が生む「おせっかい」の側面の課題など,当事者しか知り得ない課題も大変参考になりました。尚,これらの事業は行政に頼らず,宅配業者や看護士さんボランティアを活用しています。

報告者: 山下 洋