テーマタウンの創造による商店街の再生 ― 杉並区和泉明店街「沖縄タウン」の挑戦 ―

青物横丁商店街 商店街研究会では、10月の活動として、当研究会の中津留診断士が支援に携ってきた杉並区の和泉明店街を訪問しました。  新宿から京王線で2駅目の代田橋駅の北口から数分に位置し、後背地は密集した住宅街が広がる典型的な近隣商店街で、最盛期の昭和40年代には、120店を数えた和泉明店街ですが、数年前には対面販売を行っているお店は30店ほどまで衰退。おきまりの後継者難、経営者の高齢化と、商店街存続の瀬戸際まで追い込まれていました。 

1. テーマタウン化のきっかけ

 このままでは商店街がなくなるという危機感が募る中、いくつかのお店で後継者ができたことをきっかけに、今回お話を伺った小尻会長を初めとした商店街のメンバーが打開に立ち上がりました。
たまたま渡嘉敷杉並区議(当時)から持ち込まれた、「沖縄をテーマにした街づくり」という提案に、多くのメンバーが、「なぜ、和泉明店街で沖縄?」といぶかるなか、とにかく一度観てみようと訪問した沖縄で、小尻さんは沖縄の文化、自然が店ごとに息づいている様子に、「これなら商店街みんなで取り組める」と感じとられたとのこと。
「特定の飲食店が流行るだけではダメなんです。皆が利益を享受できないと」と語る小尻さんは、志を共にする仲間達と活動を開始しました。

2. (株)沖縄タウン設立

 とはいえ、大資本がテーマパークを作るのとは違い、様々な業種、業容が集まった商店街が、近隣住人の日常の買い物の便を守りつつ、広域からの集客も同時に実現するために、意図的にテーマタウンの形成をめざすというのは前代未聞の取組みですから、既存の公的支援や規制の枠組みからははみ出す部分も多くあります。ましてや和泉明店街は任意団体で事業を行うこともままなりませんでした。
でも、商店街の衰退は待ったなしです。調整や交渉で時間をとられているわけにはいきません。そこで、リーダ達や主旨に賛同してくれる店主の皆さんが出資して「株式会社沖縄タウン」を設立することに。小尻さんはその会長に就任し、自分達の資金と自由な発想での街づくりがスタートしました。

3. 沖縄タウンオープン

 そして、平成17年3月20日に「沖縄タウン」がオープン。2日で1万6千人を集めて街再生の新たな挑戦が始まりました。
お聞きした「沖縄タウン」成功のポイントと今後の展望をまとめてみました。

成功のポイント

  1. コンビニもない小さな商店街ならではの団結力

  2. 肉、衣料、八百屋、雑貨屋などほとんどの店で取り組める沖縄産品の幅広さ

  3. リーダー達の献身的活動

  4. 応援団の存在(学生、デザイナ、沖縄舞踊のグループ、診断士などなど)

  5. マスコミによる報道(沖縄での報道から本土の新聞さらに雑誌へと波及)


公的支援との関係

  1. 「千客万来事業」を物産品店運営へ活用

  2. 「元気出せ商店街」のイベント補助

4. 今後の課題

 今後の課題として、公的資金も活用し、まだ残る空き店舗の改装をすすめ、店舗の転貸と物販、卸しでイベント費用等をまかない、自立的に回転させつつ、来訪客の満足度を現状の50%から100%をめざしたいと小尻会長とメンバーの夢は膨らみます。

沖縄タウン http://okinawa-town.jp/

報告者: 間野正裕