「自助努力による再生へ」小田原市の商店街 ―小田原市商店街連合会 会長に訊く ―

青物横丁商店街 商店街研究会では、去る7月22日、小田原市の視察を行い、小田原市商店街連合会会長の尾崎紀昭氏にお話を伺った。 

◆小田原の歴史と現状

小田原は戦国時代から江戸時代を通し、城下町として発展した。西に天下の剣嶺を望む東海道有数の宿場町として栄え、最盛期の旅籠の数は100軒近くあったという。明治以降は、鉄道網や自動車交通網の発達により、利便性を高め今日に至る。 現在、三島、沼津を含めた商圏人口は約45万人、うち小田原市の人口は、約19万人と減少傾向である。交通網の発達により、小田原は、首都圏、及び箱根・伊豆への「通過点」と化し、商圏内顧客の流出増加と、観光客などの流入人口減少を招いている。 小田原市には45の商店街が存在し、小田原駅には地下街や駅ビル、郊外には大型店が点在し、市の総売り場面積は約42万uである。尾崎会長は、「市の人口や需要に対して、完全に供給過多の状態です。」と語る。需要も年々減少し続けている。

◆個店と商店街の抱える問題点

小田原商店街 尾崎会長自ら創業400年有余の旅館「小伊勢屋」を経営する。かつては屈指の宿場町も老舗旅館が次々と姿を消している。 「旅館だけでなく、個店の状況は深刻です。“淘汰の時代”に突入しています。」 売上の低迷、店主の高齢化、後継者不足などが、個店経営を直撃している。 最寄品を扱う個店では、DS、GMSなどの進出に対し競争力が低下し廃業が後を絶たず、また、小田原駅前の土産物店も観光客の減少により壊滅的な状況である。 一方、各商店街ではこれまでもポイントカード事業などを実施してきたが、目立った効果を得られなかった。 「どの商店街も財政的に厳しく、現在では活動も活発ではありません。」と話す。 以上のように、全国の地方都市商店街における問題点を、小田原も抱えている。

 

◆今後に向けて

 「まちづくり三法」に期待できない中、自助努力での回復を模索している。現在の取り組みについて訊いた。
「観光資源を活かし流入人口を増やしたいと思います。主なターゲットは観光客です。まずは小田原城を中心に、回遊性を高めていくことが重要と考えています。」
取り組みのひとつとして、小田原城内で行われる「六斎市」がある。戦国時代に北条氏が月6回開いた「市」にちなみ、現在、年3回、約250店舗が出店し行われている。
 「販売目的ではなく、自店に客を誘導するための販促目的であることが特徴です。」熱のこもったPR活動は、とても明るい材料であると、尾崎会長は締めくくった。

 小田原城という象徴的な場所で行うこの「六斎市」に意義を感じた。「小田原」と「個店」の各々の強みを絡めた「新たな魅力」を生む源泉であることに間違いない

老舗風の個店 老舗風個店
老舗風のお店
老舗風のお店


報告者: 杉森 祐司