文字通りの地域連携型商店街事業に接して ―身近な地域の資源を知恵で生かす―

 東京支部商店街研究会では、10月4日(土)に、平成20年度東京都地域連携型モデル商店街事業に指定された「いたばしiiプロジェクト」の板橋イナリ通り商店街を訪問。同プロジェクト会長である佐藤正と板橋区産業振興課 風間智晴主査より、事業の内容と魅力についてお伺いした。

1.「いたばしiiプロジェクト」の概要 

 イナリ通り商店街は、都営三田線「板橋本町」「本蓮沼」両駅から徒歩五分の中山道清水町交差点に位置している、30店舗足らずの小さな商店街である。当プロジェクトは、商店街が、企業、町会、教育機関、行政と連携して地域資源を活用し、商店街を中心とした活力ある地域を創造することを目的として組織された。iiプロジェクトは「行きたい街、イナリ商店街」から名づけられたという。

 

2.地域資源を生かす知恵

 このプロジェクトの魅力は、身近な地域資源を知恵と工夫でコミュニケーションツールとして活用しているところにある。 一つは、地域の企業との連携。地域にある企業の魅力を住民に伝えるとともに、地域の行事に参加と協力をお願いする。しかも、協力企業については、コミュニティ紙「いたばしii通信」を通じて企業名やその内容を伝えている。これでは、企業も協力した意義があるというもの。 もう一つは、隣接する北区にあるNTC(ナショナルトレーニングセンター)の活用だ。JOCを通じてNTCで合宿中の北京オリンピック選手達との交流。商店街では必勝祈願の懸垂幕を掲げ、夏の盆踊りにはエジプトのレスリング選手団を招待。この国際交流は現在でも続いている。   さらに、情報発信のインフラが整備されている強みもある。商店街の中心には稲荷神社がある。地域の氏神様として親しまれ、商店街最大のイベント会場であるとともに、情報発信ボードが常設され情報発信基地となっている。加えて志村第一小学校と志村第一中学校があり情報発信と交流の接点ともなっている。

 あの寅さんこと「渥美清」さんは、志村第一小学校の出身だという。  その点は、情報発信ボードでもしっかりとPRされている。

3.プロジェクトの推進力と課題

 「みんなで汗をかき、汗をかいたみんなが満足できるようにしていきたい」という佐藤会長の想い。そして、この活動を支える風間主査の真摯な取り組み。この熱意がiiプロジェクトの大きな推進力だといえる。地域の資源を生かし、企業、町会、学校が協力し合い、行政が支援する文字通りの地域連携がそこにあった。
  確かに、行きたい街にするためには、「魅力ある店作りと、お店の後継者づくりが重要だ」との課題が挙げられている。コミュニティ機能を持った駄菓子屋の展開や産直野菜販売店などの取組もすでに始まっている。お二人の熱意と地域の人達の協力があれば、その課題は必ず克服できるのでは、と強く感じさせられた。
また、いつか訪れてみたい商店街である。

報告者:福原 克美