柴又レトロを感じる参道商店街 ―柴又神明会―

 商店街研究会は11月15日(土)寅さんで有名な商店街「柴又神明会」を視察した。曇り空の下、京成電車柴又駅を降りるとあの寅さんが出迎えてくれた。この寅さんの像は地元柴又帝釈天の参道商店街・柴又神明会が中心となって建立を計画し、地元住民や観光客らの募金により作られた。寅さんの故郷である葛飾柴又を訪れる客にとってわくわくする出発点となっている。また、駅前には柴又観光案内所が設けられ観光スポットや商店街の案内などのサービスを行っている。

 帝釈天に向かう人、駅に戻る人で賑わいを見せている参道を抜けて帝釈天の見事な彫刻コレクションや今も運行している矢切の渡しを見学した後、柴又神明会の会長であり、柴又まちなみ協議会の理事長である石川宏太氏から街づくりの歴史を説明いただいた。寅さんの実家のモデルになった「草だんご屋」のご主人でもある石川理事長は約1時間熱気をこめてお話ししてくれた。
 この街は庚申参りで江戸時代から賑わっている柴又帝釈天と昭和44年から始まった山田洋次監督、渥美清主演の映画「男はつらいよ」のおかげで全国区の観光地となった街である。今でもそれを目当てに年間数百万人の観光客が訪れているという。
だが、渥美清さんの死去により映画が終了すると、それまで営業努力なしでもどんどんと訪れていた観光客の足も次第に遠のき、全盛期に比べると格段の減少を見せ始めた。

 そんな危機に立ち上がったのは過去の成功体験に浸っていた商店主から代替わりした新しい世代の店主たちであり、20代、30代中心に本格的な街づくりが始まった。
  柴又のよさを再認識するためメンバーは何度も「男はつらいよ」の映画を観たそうである。そして自分たちの街のよさは、下町情緒を醸し出し、街角から寅さんやさくらがふっと出て来そうな時代遅れの街並みということに気づいた。
それを実現する柴又らしい景観作りとして、寅さん像の建立、地域連携型モデル事業として参道の街並みを浮き上がらせる白熱灯での宵灯りライトアップ、活性化事業として柴又参道アーチの建換え事業や観光案内所の設置、来街者用トイレ設置などを次々と実施した。また、江戸東京・まちなみ情緒回生事業として個店に木調の看板や手すりを設置したり、帝釈天の築塀に沿った道の整備を行っている最中である。

柴又神妙会
柴又神妙会
   

 また、駅を起点に商店街、帝釈天、寅さん記念館、矢切の渡しといったポイントを結ぶ工夫で観光客の回遊性を高め、宵灯りや宵祭りなどにより「歩きながら楽しい街づくり」に創意を凝らしている。
今後の課題は、下町情緒あふれる柴又のイメージ定着と強化によりエリア全体の統一感の創造と語る石川理事長の思いは各店主を巻き込み大きなうねりとなるであろう。

 帰り道、折からの小雨でしっとりと濡れた参道に宵灯りがうっすらと映えて心地よい柴又レトロを感じる風情であった。

報告者:山中 令士
 

 

テスト