固い結束で電子決済システムの一括導入に成功  自由が丘デパートの視察報告

 目黒区の電子決済システム「めぐもポイントカードシステム」は、目黒区商店街連合会が東京都の地域連携型モデル商店街事業の指定を受けて推進している事業で、パスモとクレジットカードが使用可能なポイントカードシステムが区内の264店舗に導入されている。これまでは区内の商店街にばらばらに導入されてきたが、今回自由が丘デパート88店舗(総店舗数101店舗)への一括導入に成功した。商店街へのカードシステム導入事例はいろいろあるが、今回のように9割近い店舗に導入されることはめったにない。そこで導入の経緯や成功の秘訣について、同デパートの大倉理事長にお話しをうかがった。

1.自由が丘デパートの沿革

 当デパートは戦後の闇市だったところに昭和28年、地上2階地下1階のビルが建設されたのが始まりである。その後昭和45年に3階4階を増築し、平成3年には借地だった土地も購入した。6年前には外壁の工事を、3年前には6000万円かけてエレベーターを設置した。
同デパートの1階、地下1階には、ひとコマ10uで90コマ、2階3階にはひとコマ25uで45コマの小間がある。1階と地下1階には衣類・雑貨などの物販店、2階、3階は飲食店が多く入居している。同デパートの建物の運営は自由が丘事業協同組合が行い、販促等の事業は自由が丘デパート会が行っている。

2.めぐもシステム導入のきっかけ

 めぐも・ポイントカードシステムの導入はシステムの運営会社であり、自由が丘の街づくり会社でもあるJスピリットの働きかけがきっかけとなった。平成20年末からネット環境の調査などの準備を始め、約1年半かけて導入した。

3.一括導入成功の秘訣

 今回88店舗への一括導入に成功したのは、大倉理事長をはじめとした執行部とデパート会会員店舗の信頼関係によるところが大きいが、そのほかに次のような理由が挙げられる。

  1. 利用料を抑えたこと
    サーバとの通信はインターネットで行っているが、データの通信に限定して利用するということで、一つの回線を88店舗でシェア(通常は16軒でシェア)し、コストを抑えた。またVDSL装置は自由が丘商店街振興組合が買い取った。その結果、通常月額3,000円程度かかるインターネットの利用料を月額400円に抑えた。

  2. 決済機能に限定して導入
    高齢者の多い会員店舗の現状に配慮し、操作の複雑なポイント機能を利用せず、決済端末に限定して導入した。

4.今後の課題

 一括導入には成功したが、本当の成果が問われるのはこれからである。さいわい同デパートは駅に隣接したビルの中にあり、来街者のほとんどが駅の利用者で、PASMOやSUICAを所持していると考えられる。駅なかの店舗ではPASM・SUICAの利用率が50%以上に達しているというデータもあり、同デパートで利用できることが周知されれば利用率の向上が期待できる。導入後1カ月足らずということでデータはまだ出ていないが、今後の展開が楽しみである。

報告者:  中央支会 服部 恭典