中心市街地に立地する商店街の役割 ―人情味あふれる街づくり―

立川南口中央通り商店会  商店街研究会では、1月22日(土)立川市の「立川南口中央通り商店会」を視察し、当商店会の副会長である高野裕穀氏をはじめ、立川市の神宮聖治氏、JA東京みどり理事の村田訓男氏にお話を伺いました。  立川駅南口周辺は多摩都市モノレールの開通により大規模な区画整理事業が行われ、街並みの近代化と共に、一大商業集積地へ急速に発展しました。第6回東京商店街グランプリで優秀賞を受賞した「南口ファーム」事業は中心市街地の商業機能を担う商店街の活性化手法を再認識する事例です。

 

1.地域コミュニティーの希薄化

 当該商店会は立川駅南口から半径300m圏内に約45店で構成されています。駅および周辺はハード面が整備され個性的な業態店が出店し、広域から来場した若者で賑わっています。一方で、象徴である中央通りの拡幅は従前の商店会に好機をもたらしません。商店会は東西に分断され、ビルオーナーになる会員が増えてきました。地域住民の憩いの場でもあった店は消え、気付けば、本来の持ち味であった人情味あふれる商店会らしさは希薄化していました。

2.農商連携型空き店舗活用

 活性化事業の大きな特徴として、他地域からの来街者を取り込むのではなく、地域住民を商店会へ回帰させることに集中させています。商店会の活性化に繋がる実践的かつ鳥瞰的な事業を導入するため、2つの仕掛けがありました。1つは、空き店舗を活用した地域住民に愛される「キーテナント」、2つは、多様な団体との「連携」です。
「南口ファーム」と命名されたキーテナントは、建物や地域が以前持ち合わせていたエッセンスを復活させ、現代風にアレンジを加えています。特長を有した3店舗が集結し、相乗効果を発揮しています。

(1)農産物直売所「みどりっ子」

 JA東京みどりとの共同事業として、近隣農家で朝取りもしくは前日夕方に収穫した新鮮野菜を2t車で集荷して販売しています。菓子や地酒等の購買品も取り扱っており、品揃えを充実させています。また、地域のホテルなどでは、ここで購入した野菜を使った地産地消メニューは好評です。この店舗だけで1日350人の来場者があり、ランドマーク的店舗となっています。

(2)「信濃大町アルプスプラザ」

 立川市の姉妹都市である長野県大町市のアンテナショップです。大町市のお土産品や食品加工品(蕎麦、おやき等)を販売しています。また、観光案内所も兼ねており、新たな雇用創出、若年者の就労支援の受け皿にもなっています。

(3)「たちかわ若者サポートステーション」

 地元NPO法人との共同事業です。商店会や地域及び農家を若者の就労体験の場として活動しています。地域振興の担い手不足の中、積極的に若者が参加することで地域活性化の原動力となっています。

3.今後に向けて

 視察した1階の物販店舗には店員と世間話しを楽しむ顧客の姿が散見され、懐かしささえ感じさせられます。1日500人近い集客力を誇る「南口ファーム」が商店会のキーテナントとして確立された今、来場者を回遊させ、商店会全体へ波及効果を狙うことが課題となっています。

報告者: 城南支会 鈴木 恒雄(のぶお)