地域一丸で環境整備に取り組む神田駅西口商店街

 商店街研究会では、まだ暑さの残る9月15日(土)、千代田区の「神田駅西口商店街振興組合」を訪問し、秋山利昭理事長から「バブル崩壊から20年・神田西口の歩み」をテーマに、神田西口の今までとこれからについてお話をお伺いしました。

1.神田駅西口商店街の今まで

 神田駅西口商店街振興組合は、巾6m、全長約300mの街路に、飲食店を中心とした約100店のお店が立ち並ぶ商店街です。 神田駅西口の商店街は、戦後間もない昭和26年、地元の「街路灯で街を明るくしよう」という活動から始まりました。その後、高度経済成長を経てバブル期まで、周辺の開発や大企業立地などの機会にも恵まれて成長し、バブル期にはサラリーマンを中心に毎日7万人もの来街者があったそうです。 その状況が一変したのはバブル崩壊後のことです。日本経済の急激な悪化に伴い、近隣に立地していた大企業の本社や事業所、関連会社などが相次いで撤退。来街者の減少はもちろん、立ち行かなくなった商店の廃業による空きテナント化が進み、そこにサラ金業や風俗業などの店舗が出店してきました。その結果、金融業者のポスターや捨て看板、アジア系女性を主とした違法客引きなど、駅前は治安や環境の悪化に悩まされ、「神田は危ない街」というイメージダウンが危惧されることになりました。 この状況を重く見た商店街は、行政や警察にも働きかけて、環境の改善に取り組みました。まず、警察・区役所と合同での定期的パトロールにより、違法なポスターや看板の撤去、客引きなどの取り締まりを行いました。また、高温高圧洗浄機による街路洗浄、防犯カメラ設置などにも積極的に取り組み、神田駅前の治安は大幅に改善しました。ここ数年は、休日に買い物や食事を楽しむ家族連れなども多く見かけられるようになってきています。

2. これからの神田駅西口商店街

写真  秋山理事長は、「自分たちの使命は、地域の環境を整えてその価値を向上させる事だ」と仰っていました。商店街振興組合は加入店舗から資金を集めて地域価値を向上させる投資を行い、それにより得られた治安の向上や来街者数増加といった効果は商店街全体、ひいては街全体に及びます。だからこそ、組合に協力せずに恩恵だけ受けようとする「客泥棒」は絶対に許せない、と仰っていたのが印象的でした。 秋山理事長が強調しておられたのは、「当事者意識を持ってほしい」という事でした。街づくりは誰かがやってくれるのを待つものではなく、自分達が主体的に取り組んでいかなければなりません。そのため、組合では前述のパトロールや街路洗浄は組合員自らが行っているほか、防災対策などにも積極的に取り組んでいます。 組合員や地域住民が当事者意識を持って街づくりに取り組む神田駅西口商店街。今後の発展にも注目が集まりそうです。

 

 

   商店街を見守る商いの神、佐竹稲荷神社

城北支部 谷池 公治