「まち」を愛し商店街を応援する人々と連携〜丘と緑と水」の地域特性を生かした「アートで彩る街 玉川学園」

 商店街研究会では、4月6日、平成23年度「アートで彩る街玉川学園」で東京都地域連携型モデル商店街事業に指定された、町田市の玉川学園商店会(駅北口側)と南口商店会の視察を行いました。高橋靖昭事務局長から玉川学園地区の特徴、商店街の歴史と概要、活動内容についてお話を伺いました。

1.商店街の概要

 小田急線玉川学園前駅は昭和4年に玉川学園の創立と周辺の丘陵地開発を機に駅ができました。当時は都内から移り住んだわずかな学者、芸術家などの大学関係者だけの街でした。商店街を囲む緑豊かな丘陵には多数の小さなギャラリーとユニークな名前の坂道や散歩道があります。文教地域になっている為、パチンコ店や風俗店はなく、他の商店街でおなじみの放置自転車がない落ち着いた町並みです。電柱を地下に埋設しているため歩いていると視界が広くゆったり感がありました。学園設立時に「ゆめの学校」として緑豊かな丘陵地帯に溶け込むことを描いたように、町全体がそのイメージを受け継いるように感じられました。

アートで彩る街 玉川学園

 高度経済成長と人口の増加に伴い発展してきた商店街も昭和60年くらいから集客力が落ちてきました。バスターミナルがない、郊外型大型店舗の進出、話題性、魅力的な店舗がない、夏祭りなどのイベント効果も一過性にとどまっている等の問題がありました。商店会のメンバーは何とかしたいという思いが強くなってきたそうです。このような商店街がモデル事業に選ばれたのは、「町内会」や住みよいまちを目指す「まちづくりの会」、「芝生の会」などから長年の応援があり、さらに町田市の全面的な支援があったからだと高橋事務局長は振り返ります。当初はアート的にやってみようという雰囲気ではなく、地域の特徴や問題を話し合い、まちの観察会やワークショップを重ねてこのテーマにたどり着いたそうです。テーマがないと悩む商店街には玉川学園商店会がたどった軌跡は参考になることでしょう。 モデル事業では文教地域の特徴を生かし心豊かに散歩ができる街、買い物しながらアートを楽しむことができる商店街を目指しています。この事業の柱となる「まち並み景観事業」は、アートフラッグや小中学生の作品を街路灯に展示、絵本に登場する人物のオブジェ、ベンチの設置、シャッターアートや各店舗の特徴を表現したメルヘンチックなアート看板を飾っています。年中行事の中の「ギャラリーウォーク」「雛めぐり」「桜めぐり」の参加者に、看板めぐりのチラシを配りアート看板を目印にしたお店探しへ誘導しています。関連グッズや絵本を作成した「イメージ創出事業」も商店街にテーマを持たせることにより日常的な集客や回遊性を高めることができました。大きなハードを造らずとも、お客様に親しんでいただける取組みが評価されています。

3.最後に

 高橋事務局長は商店街の意識のまとまりはまだ不十分だと謙虚です。しかし、目に見える形を着実に積み上げていきますと力強く抱負を語っておりました。地域との連携もさることながら、商店街が諦めず努力し続けたことに拍手とエールを送ります。

三多摩支部 鎌田 泰宏