寺島なす復興プロジェクトについて ―江戸東京野菜の復興で商店街店舗を巻き込んだ、にぎわいづくり―

 商店街研究会では、7月2日(土)、墨田区の「東向島商店街組合」を視察し、理事長である坂本武彦氏より、平成27年度の東京都商店街グランプリの優秀賞にノミネートされた「寺島なす」復興プロジェクトの概要についてお話を頂きました。

1.東向島駅前商店街振興組合の状況

 東向島駅前商店街振興組合は、昭和59年に発足しましたが、それ以前は、「玉ノ井駅前通り」と呼ばれた古くからの商業地区でした。東武スカイツリーライン(伊勢崎線)「東向島」駅前の「粋いき通り(博物館通り)」を中心に51の会員店舗(別途賛助会員店舗2店)で構成される商店街です。

2.「寺島なす」復興プロジェクトの経緯  

寺島なす 平成19年頃より、墨田区から、「これから東京スカイツリーが建設されることを見据えて、街を活性化できないか」と商店街に声がかかりました。 その動きが、東向島駅前商店街を代表としたネットワークづくりのきっかけとなりました。平成24年に、いろは通り付近に「玉ノ井カフェ」がオープンし、地域の情報発信の拠点となりました。その頃に、地域資源の復興として、かつて徳川将軍家綱も食した地域の伝統的な野菜「寺島なす」を地域資源として活かす取り組みが始まりました。 「寺島なす」復興にあたって、地域にゆかりのある農家の方が協力をしてくれ、初めは、墨田区外の地域の畑で寺島なすが作られてきました。量産された現在は、墨田区内でも数多く作られるようになり、商店街周辺の畑や、向島中学校の跡地を農園として活用し、作られるようになりました。

現在は、東向島駅を降りると、すぐに見える花壇には、寺島なすが栽培されている様子が見られます。  商店街加盟店に呼びかけ、「東向島N(なす)級グルメ取扱店」として、13店舗程の飲食店、製菓店等にて、寺島なすを活用したメニューが並ぶようになりました。

左写真: 寺島なすとプロジェクトで制作した資料

 

3.江戸野菜復興のためのネットワーク

 東向島駅前商店街では、寺島なすの復興をきっかけに、江戸東京の伝統野菜全体の復興に意識を向けるようになりました。平成26年時点で現在江戸東京野菜として認定されているのは、約43種類と言われています。江戸野菜全体の普及をとおして、寺島なす自体の魅力向上に繋げています。また、おととしには「寺島なすサミット」を 開催して、寺島なすをはじめ、江戸東京野菜の普及を呼び掛けています。 地域資源である「寺島なす」が、商店街の10を超える店舗で商品として利用されていること、江戸東京野菜の復興のきっかけとして動き始めている取り組みは大変貴重であると感じました。今回の取り組みが、新たな江戸東京野菜の普及に繋がっていくと考えると、引き続き目が離せなそうです。

城北支部 鵜頭 誠