商店街研究会9月例会_高円寺銀座商店会協同組合(高円寺純情商店街)

 JR高円寺駅改札口集合場所後、北口街路を視察後、講演場所のまちの駅会議室で、講師の同商店街の吉田善博専務理事から、アフターコロナ後のイベントとまちづくり会社設立についてのテーマでご講演をいただいた。

1.高円寺純情商店街について

 高円寺純情商店街は、JR高円寺駅の北口一帯を対象とした約205店舗の中の200店舗を加盟店とする協同組合の商店街組織である。当商店街の設立は、65年前に設立され、当時は高円寺銀座商店会と名乗っていたが、ねじめ正一の小説作品が昭和61年(1986年)から昭和63年(1988年)にかけて小説新潮に掲載された高円寺純情商店街が平成元年(1989年)に第101回直木賞を受賞した。 ねじめ正一本人の実家の乾物屋と商店街での話が元になっており、小説の舞台となった高円寺に実在する商店街は、以前は高円寺銀座商店街であったが、この作品にちなみ高円寺純情商店街を名乗るようになった。

2.商店街の現状について

 戦後の復興期から高円寺駅前の立地の良さから、出店はナショナルチェーン店が多くなり、以前は顔見しりが多かったが、他の地域からナショナル店の店長は派遣され、店員はアルバイトである。人通りは多いが、物販店は減少していった。 昭和40年代よりロック喫茶やライブハウスがオープンし、フォーク&ロックの聖地として知られ始め、その後は駅の南側を中心に都内屈指の古着街が形成された。毎年8月下旬に開催される「東京高円寺阿波おどり」は、阿波おどりの街としても全国的に有名である。 社会の少子高齢化などの影響で、昔ながらの個人店舗が後継者不足のために減少。人の優しさ、温かみにふれられるこの商店街のよさが徐々に失われてきていることが不安視された。  吉田専務理事の父親は、福岡出身で同商店街で建設・不動産業を営んでいた父親の後を受けて、理事になり、今は専業で専務理事となっている。

3.街路灯を水銀灯からLEDへ

 当時水銀灯であった街路灯10本をLEDに建て替える。平成23年に地域商店街活性化法の認定を受け、商店街支援センターからのアドバイザーの派遣をうけて行った。この費用は、1本あたり100万円で総額は約1億円で国からの補助金9,000万円と杉並区から500万円の補助金と年間280万円の電気代の区の補助により、2年で事業費を回収した。その後も続いた電気代の補助を活性化事業に利用した。

 4.純情ブランド開発事業

 平成26年、にぎわい補助金や杉並区の「地域特性にあった商店街支援事業補助金」を活用して、この商店街の歴史、イメージを今一度再認識してもらう商店街の魅力をブランディングする取り組みに着手した。純情商店街らしさを持つ商品を「純情ブランド」として認定し、商店街マップを作成して取り扱っているお店を紹介しました。「純情ブランド」のジャンルは、お米やお酒からマッサージ、アクセサリーまで、幅広い範囲に及んでいる。また、山形県飯豊町のJAおきたま青年部が、学校支援の一環として、杉並第4小学校で、出前授業として稲作の指導を行っていたのをきっかけに、お米の「はえぬき」を純情米として、純情商店街ブランドに認定した。飯豊町町長の提案で、アンテナショップ「IIDA」を立ち上げると共に農村留学(農村体験)を始めた。これは平成27年に、地域商業自立促進事業として立ち上げ、農家民宿に1泊5千円で2泊する事業で、小学5・6年生2・3人を商店街の事業費でバスチャーターして実施した。

5.インバウンドへの対応

 平成28年、地域・まちなか商業活性化支援調査事業で、インバウンドに向けた調査を実施、同じく商店街・まちなかインバウンド促進支援事業で、民泊施設モデル設置と商店街ブランド品多言語販売の事業に取り組んだ。高円寺には、古着屋やサブカルチャーが多くあり、外国人などが安価に泊まれる民泊施設が無かったため、平成29年からは、アンテナショップ「IIDA」の上に民泊施設を設置して運営を委託をして行った。高機能Wi-Fiの設備を設置、多言語化情報の発信を地域・まちなか商業活性化支援事業として行った。アンテナショップ「IIDA」と民泊施設については、商店街研究会の例会で視察を行っている。民泊施設は、平成30年に現在では中央線の南側にゲストハウス高円寺純情ホテルとして運用していて、5室10人が宿泊でき年間で200万円ほど、5年間で1千万円の収入があり設立時の資金の返済は終了している。

6.商店街が核になりまちづくりを行う

 コロナ過が始まった2月末には、学校が休校になり街から人が消えた。若い飲食店の経営者を中心にテイクアウトを始めてので、商店街としてテイクアウト店の情報を発信した。コロナ過で200店の会員店のなかで飲食系を中心に45%のお店が閉店して変わった。街で変わったことは、飲食店の注文がタブレットに変わり、牛どんの松屋は食券の発券後はセルフに変わったり、そのような時代になれることになった。  令和6年から縁日で焼そばを再開する予定で、道具類はまちの駅会議室に保管されている。3千円の買物で三角くじで1枚が提供される。外れは無いそうで、今までは1等の4Kテレビが最終日に当たるため、最終日のお客は、通常の5倍になる。

7.阿波踊りの再会

 4年ぶりに阿波踊りを開催した。吉田専務理事は財政部長としてコロナ禍の3年間の事務局経費が賄えない状態であった。今まで開催には7千万円が掛かったが、警備費用が1.5倍になり、警察と消防との調整が大変であった。阿波踊りの振興組合は町会等で組織化されている。毎年参加していた学生ボランティアはほとんどが卒業しており、4年生が新規の学生ボランティアを指導していたが、それが無くなったが、学生のOBが10名集まって新しい学生ボランティアを指導した。今回の経験から阿波踊りは地域資源であり、持続的に行うことが課題となった。

8.未来を創る商店街事業に採択される

 対象商店街に3年間に渡り商店街の取組に伴走するアドバイザーを派遣し、上限は1年目が、1,500万円、2・3年目が5,000万円の補助金交付により資金面から事業実施を支援する。  高円寺純情商店街は、駅の南側の高円寺パル商店街(振)との共同事業になり、商店街が核となる地域ネットワーク化によるまちづくりを行う。具体的には、貴重な地域資源である阿波踊りを活用したブランディングや地域情報の発信等について、地域の様々な団体とともに取り組んでいく商店街を目指す。また、安全・安心や次世代の人材育成などの取組を地域と一体になり解決する持続可能なまちづくりを進めていくものである。  2商店街で行う事業をまちづくり会社を設立して、事業委託を行って進める予定である。