JR高円寺駅−阿佐ヶ谷駅間の高架下商業施設 テーマ:都市部の鉄道高架下空間の商業施設利用について

 2023年10月7日、商店街研究会の月例会としてJR高円寺駅と阿佐ヶ谷駅間の高架下商業施設を視察しました。15時に鈴木隆男会長以下メンバー11人がJR高円寺駅前に集合。講師役を務めた商店街研究会会員、齋藤彰中小企業診断士の説明を聴きながら、高円寺駅の東は環七通りと交差する地点から、西は阿佐ヶ谷駅に至る約2kmの高架下区間を歩きました。 視察対象の「高架下」ですが、これは土木構築物である鉄道高架橋の下の建築物を指します。建築物の天井は高架橋の床と離れ、天井を支える柱は高架橋の支柱と独立しているのがポイントです。敷地はJR東日本の所有で、高架下建築物はその子会社のJR東日本都市開発(JRTK)の所有です。JRTKが建築物を管理し、テナントに賃貸しています。今回視察した区間は1966年(昭和41)の中野駅・荻窪駅間の高架化に伴って整備され、実に50年以上の歴史を有しています。 さっそく高架下区間を高円寺駅の東側から見てみましょう。中央線に並行する芸術会館通りの歩道に沿って高架下建築物に入居するコンビニ、自転車店などが路面店形式で営業しています。事務所や倉庫も散見されます。

1.高円寺マシタ・高円寺ストリート

 高円寺駅から雰囲気が一変し飲食店中心のテナント構成になります。ここから西に約300mは「高円寺ストリート」(高円寺駅西商店会)といい、駅に面した1番街から西端の7番街まであります。ただし2番街は2023年3月31日に再開発され「高円寺マシタ」にリニューアルしました。ケンタッキー・フライド・チキン他6店舗が入居しています。高円寺マシタのオープンと同時に1番街が閉業し、目下再開発中となっています。 再開発の区域から外れた2番街北辺、3番街から6番街にかけて昭和スタイルの飲食店街が残っています(写真)。1968年、南口に「ムービン」が開店したのをきっかけに、70年代にかけて高架下を挟んで南北にロック喫茶が集積しました。そうした背景もあって、高円寺ストリートが高円寺歓楽街の地理的な中心となっています。

2.アールリエット高円寺

 7番街の先は貸倉庫や駐車場が続きます。ちょうど高円寺駅と阿佐ヶ谷駅の中間地点にあたり、周辺は住宅街です。路線に接する区画の1つに賃貸マンション「R-Lieto KOENJI」(アールリエット高円寺)があります。1965年(昭和40)に竣工したJR高円寺社宅をリノベーションしたもので、貸主は高架下建築物と同じJRTKです。この近くの高架下には倉庫を改装したイベントスペース「高架下空き倉庫」があります。例会当日は「高円寺プラフェス」が開催されており、多くの親子連れで賑わっていました。高架下の、道路を渡った向こう側にはスーパーマーケット「Big-A」(ビッグ・エー)がありました。

3.アルーク阿佐ヶ谷

 高架下をさらに西に進むと、「al?ku(アルーク)阿佐ヶ谷」のゾーンに入ります。ここは2014年に「アニメストリート」として開発された区間ですが、2019年に再度リニューアルされ現在の姿になりました。子育て世代をターゲットとしたテナント構成になっており、学童保育施設やカフェが営業しています。

4.ゴールドストリート・ビーンズてくて

 その西側、阿佐ヶ谷駅に近くなってきたところに「GOLD STREET」(ゴールドストリート)、その先が「Beans(ビーンズ)てくて」(写真)です。「ビーンズてくて」は阿佐ヶ谷駅から中杉通りを挟んで東側の高架下区間ですが、阿佐ヶ谷駅ビル「Beans(ビーンズ)阿佐ヶ谷」の一部分となっています。いずれも2017年に元々あった高架下区間がリニューアルされて現在に至ります。明るい雰囲気の高架下商業施設です。
 およそ1時間のまち歩きでしたが、齋藤講師の説明で印象に残ったのは、「高円寺駅から阿佐ヶ谷駅までの駅間を安全に歩ける歩道空間にする」というコンセプトです。人の気配がないイメージが先行する高架下ですが、今回実際に歩いてみて、明るく歩きやすい空間であることがわかりました。

 鈴木 文彦