水門通り商店街 イベントマルシェG-round「地域で描く円と縁」

 東京都では都内の商店街の役割や魅力を広く知らせることを目的に、優れた取組みを表彰・紹介する「東京商店街グランプリ」を開催している。令和5年11月14日に行われた「第18回 東京商店街グランプリ表彰式」では、大田区の「水門通り商店街振興組合」がグランプリを受賞した。「水門通り商店街」は京急雑色駅から多摩川の河口近くの「六郷水門」に向けて続く長い通りにある商店街である。表彰の対象は、同商店街青年部が取り組んでいる「イベントマルシェG-round『地域で描く円と縁』」である。

1.イベントマルシェG-round「地域で描く円と縁」の開催の経緯について

 イベントマルシェG-round「地域で描く円と縁」は3年前の令和2年からはじめたイベントである。 コロナで密な空間は敬遠されイベントが無くなる。ダンススクールの発表の場もなくなり、それなら屋外で何かできないかと澤と朝倉の両氏が考えた。そこから生まれたのが「屋外でマルシェとイベントを掛け合わせた催事」の開催である。京急雑色駅の前には広場があり、好立地で出店ができるので、地域貢献や子供のダンスの発表の場として、ここを是非とも活用しようと考えた。 当時、水門通り商店街振興組合の会員であった澤氏が、理事会の間を取り持ち、水門通り商店街振興組合の小林理事長に相談したところ承認を得た。理事長はどんな話でも前向きに聞いて、丁寧に相談に乗ってくれる方である。

2.「G-round」とはどのような取り組みか

 「G-round」は英語の「Ground」、ここで言うと雑色駅前広場という「場」を中心として、その周囲に「round」、「円状に賑わいや縁」が広がっていく、という意味や想いを込めて澤と朝倉の両氏が命名した。 当初は、月に1回を目標に実施しているのも、その意図があり、年に1度の頻度ですと準備はしっかりできるが、年に1回の打ち上げ花火で終わってしまい、我々が考えている地域を中心とした「縁」はつくれない。雑色駅前の広場という場所で、継続して開催し続けることで生まれるものがあると期待している。

3.実行にあたり青年部を創る。

 イベント開催のため、AC実行委員会を立ち上げた。ACとは、朝倉氏が代表を務める合同会社A4と澤氏が代表取締役の有限会社C&Cからとったもので、途中から青年部になり、水門通り商店街振興組合から委託されて、イベントを行う形を取るようになった。現在の水門通り商店街の青年部員は、5名になるが、その中心は澤正義氏で、水門通り商店街(振)と雑色商店街(振)のそれぞれクリーニング店を開いている。

4.雑色駅前広場について

 京急雑色駅前の広場は、かっては、バスターミナルを造ることを計画していたようである。所有者は大田区になる。G-round開催にあたり、大田区と警察署の許可が必要になるため、開催時の申請には、使用目的を明確にして申請を行い許可を得る。G-round開催前に、雑色商店街(振)と仲六郷町会には挨拶に伺っている。雑色駅前広場での開催にあたっては、雑色商店街(振)との軋轢があったが、澤氏が雑色商店街(振)にも店舗があり、仲を取り持つことになる。

5.G-round開催にさいして

(1)AC実行委員会

 G-round開催では、水門通り商店街(振)からの委託業務として、AC実行委員会が実施している。同委員会のメンバーは、約20名で高校生や主婦なども参加している。設営から運営、後片付けは実行委員会で行う。参加はそれぞれまちまちで、設営時に1時間だけ協力する方など、さまざまである。

(2)運営費用について

 出店料で採算を取っている。水門通り商店街(振)の会員店舗は無料になる。参加者は、2・3店舗で珈琲店、たこ焼き、リサイクルショップになる。人手がなく商品のみ販売したい店舗は、商品を預り販売を行う。大田区内からの参加者は1万円、大田区以外は、2万5千円の参加料を徴収するが、商店街加盟店には割引を行う。

(3)参加者の募集について

 初回は、AC実行委員会のメンバーの知合いを誘って開催する。2回目以降は、SNSで集めて、ラインに登録で行い開催時のに呼びかける方式としている。澤氏の知合いのトヨタ自動車の販売店や明治生命が協賛店として参加している。キッチンカーは特例として出店を許可している。

(4)イベントの告知について

 水門通り商店街(振)のHP、チラシ、ポスターになる。チラシは1回7千枚を配布した。裏面には協賛企業のトヨタ自動車販売店や明治生命の広告を印刷してある。また、グランディオには、朝倉氏がマネージやーから許可を得て、ポスターを張っている。

5.補助金について

 行政からの補助金を利用していない点もグランプリでは評価の対象となった。元々補助金等は利用する発想が無かった。補助金ありきでスタートしてしまうとイベントの実施時期や内容も影響を受けてしまうのと毎回使用することの難しさためで、我々はスピード感を大切にして、G-roundでは、持続可能性が必要で、お金を稼ぐ場所で、どう還元するかを考えて補助金は使わず、参加店舗からの出店料で運営していく形を選んだ。

6.今後の展望について。

 「G-round」の実行委員会には若い方が多く参加しているため、協力者の若者の意見をよく聴くようにしている。今後は「G-round」で培った取り組み・ノウハウを別の商店街や地域に展開していくことを考えている。商店街に加入してもメリットは無い。大田区には都内で最多の140の商店街があり、持続可能性を考えて新しい取り組みをはじめる時、我々はその滑り出しをサポートすることができる。事業として結果マネタイズすることも視野に入れている。

鈴木 隆男